塾講師の計画性

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私の子どもがまだ幼かったころのことを思い返してみても、字が書けるようになるのを必死に願って、真似して書いた字を大人に見せ、「あれはなに?」「なに?」と大人のお尻を追い掛け回すことがよくありました。 子どもは本来、大人になりたいし、賢くなりたい生き物なのだ、と痛感させられる姿でした。
たしかに、この感情を保ち続けることができれば、「勉強をしろ」などという必要はないのかもしれません。 その意味では、「親が勉強を強制するとかえって勉強嫌いになる」という説も、それなりに説得力があるもののように思えます。
 周囲の環境や勤勉の文化がどう動機づけに生かされるかということや、最初はアメとムチで勉強をしていても、そのうちに勉強の楽しさに目覚めて、人にいわれなくても、あるいは対価としての餌がなくても勉強する気になるように方向づけていくことが大切だという考え方です。 ちなみに、I川教授は学習動機を充実志向、訓練志向、実用志向、関係志向、自尊志向、報酬志向の六つの志向に分類し、「なんのために勉強をするのか?」という質問に対する生徒の記述回答を統計処理しています。
それによると、充実志向−訓練志向−実用志向の三つと、関係志向−自尊志向報酬志向の三つは、お互いに相関が高いことがわかったといいます。 「勉強が楽しい」と書く人(充実志向)は、知力を鍛えたい(訓練志向)とか、勉強を仕事や生活に生かす(実用志向)という理由を書く傾向にあり、一方で「他人がやっているから勉強をする」と書く人(関係志向)は、プライドや競争心勉強がもっと好きになる!最新心理テクニック(自尊志向)、あるいは報酬を得るために勉強をする(報酬志向)という理由を書く傾向が強いというのです。
報告結果では、後者に属する動機づけが強い人は、動機の高さに比して、有効な学習方法を探り勉強法を工夫することには関心が向かわない傾向がある、というふうにも指摘しています。 要するに、人の評価(ほめられたいなど)を基準にし、なんらかのメリットを求めて勉強する外発的な動機の人間は、それが失敗したときにろくな工夫もしないと指摘しているのです。

I川教授自身は「単純な二者択一ではない」と断っているし、前者は内発的動機とイコールのものでないと断ってはいます。 その調査や報告を見るかぎりは、どちらかというと内発的動機を重視しているスタンスのように感じます。
大人が勉強する場合、人からいわれたり強制されるより、勉強を楽しみ自らを充実させたり、勉強を生活や仕事に生かしたいという内発的な動機をもつ人がむしろ主流と考えられます。 そのほうがやはり、勉強の工夫もしやすく、長続きしやすいといえるのではないでしょうか。
I川教授の説を借りれば、学生のころは勉強好きでもなく、勉強の工夫もろくにしなかったとしても、社会に出て自分を磨く勉強を志し、知的なものへの興味も高まってきたなら、それだけでも勉強を進めるうえで有利ということになるわけです。 そうはいっても、社会に出てから始める勉強のなかには、ビジネス上の必要に迫られて始めるものが少なくありません。
それが自分の興味や関心に沿うものであればいいのですが、あまり面白くないと思いながらも、「仕方なく」勉強を続けざるを得ないことも現実にはあるでしょう。 このようなケースが「集中力が続かない」ケースとちがう点は、問題が一日何時間勉強を続けられるとかいうところにではなく、一つのテーマについての勉強が長期間にわたって継続できないというところにあることです。
たとえば、資格試験の勉強を始めたものの、一週間もしないうちに嫌になり、勉強のつもりで読勉強がもっと好きになる!最新心理テクニックみ始めた本がいつまでたっても読み終わらない。 この状態は、勉強の成果そのものに大きな影響を及ぼすだけに深刻な問題です。
だいたい、嫌々ではあっても続けていくうちに理解が進み、徐々に成果が上がってくるのが勉強なのです。 勉強そのものが続かないというのでは、理解は進まず、成果も上がらないということになってしまいます。
この場合、なんらかの手を打たなければ、勉強の効果は期待できないということになってしまいます。 私自身、勉強は興味や関心のあること、楽しめることをやるに越したことはないと考えています。
その意味では、I川教授の調査結果に賛同できます。 とはいえ、この考え方には、ある種の抵抗を感じているのも事実です。
なぜかというと、そもそも勉強の動機づけを本当に求めているのは、必要に迫られて、あまり楽しいと思えない状態で勉強をしなければならない人たちだからです。 それなのに「プライドや競争心で勉強しているようではダメ」「勉強によってメリットを求めるようだからダメ」などという調査結果をつきつけられると、これでは現実に問題に直面している人たちは立つ瀬がなくなってしまいます。
教育心理学の立場からは、内発的動機のほうが理論上は好ましいのかもしれません。 精神分析や精神医学の治療理論の流れ、国際的な教育政策を見るかぎりでは、やはり、内発的動機より外発的動機のほうを重視する方向に傾いているように思えてなりません。
性欲論や死の本能論でも知られ、「精神分析の祖」と呼ばれているフロイトは、本能的なエネルギーの強さを説き、人間はその内なる千不ルギーに動かされているのだという典型的な内発論者でした。 その後の精神分析の理論では、このフロイトの本能欲動理論は否定的にとらえられるようになっています。

逆にI川教授が否定的に取り上げている関係志向自尊志向報酬志向が人間の本質的な動機なのだと考えられるようになってきているのです。 精神分析理論では、教育心理学の理論とは逆に、内発的動機より外発的動機が重視されるようになってきているわけですが、私自身もこれを軽視すべきではないと考えています。
この傾向は、精神分析の理論にとどまりません。 精神医学の世界でも外発的な動機づけの人気が高まっています。
一時は捨て去られた行動主義の考え方が息を吹き返し、その考えに基づいた行動療法による治療法が注目されているのはその証左です。 行動主義というのは、心理学の世界で一時主流となっていた理論です。
心理学でありながら、観察対象を人間の「心」ではなく「行動」に置いているのが特徴です。 その客観性の高さから一時はかなりの人気を博していましたが、心を無視しているという批判が強まり、下火になっていました。
九〇年代以降、その行動主義に基づいた行動療法が再び注目を集めているのです。 患者の心の内面にアプローチしていくよりも、アメとムチを用意して行動を変えていくほうが短期間で治療が済むうえ、治る確率も高いという結果が得られているためです。
少なくとも、病的な人間を社会適応させていくためには外的な動機づけが重要なのだという考え方に、精神医学界全怖が変わってきたように思います。 やる気が出るまで勉強をせず、いつまでたっても勉強に手をつけられないというのは、とくに社会に出てからの勉強ではありがちなパターンです。
やることを決めて、実際にやることを先決とする行動療法の考え方は、そんな人たちが行動を起こすうえで大きな力を発揮するように思います。  

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